もじおこ

備忘録 文字起こしときどきニュアンス 耳が悪くてごめんなさい

2021/5/30シゲ部(美術館・本の楽しみ方・おとなになるのがこわい)

5月最後の放送です。どうしっよっかねぇ。まぁメッセージはいくつか来てるんですが。ちょっとこんなの読んでみましょうかね。

 

★部員メール(美術館を楽しいと思えないのがコンプレックスです)

なるほどね~。わかるなぁ、めちゃくちゃ。俺もやっぱちっちゃい頃、親は好きでさ、連れてかれたりするけど全然ついてけないなって思ってた時いっぱいあったしね。でも、絵が好きになってきたってのもあるし、絵を好きになりたいってそれこそコンプレックスじゃないけど、絵を好きになってみたいって思ったのはあったなぁ。だからなんでこの絵がそんなに歴史的な名作とされてんだろう?みたいな、そういうところが知りたかった所ももちろんあるけど、なんだろうね?いっぱい行けばいいってもんでもないと思うんだよね、はっきり言って。

わかりやすいので言えば僕の好きな浮世絵でさ、じゃあ例えば写楽だとしようか。写楽なんて言っても多くないんだけど、そんなに作品数が。短い期間だし大きく分けて写楽って4期しかないんだよね、流れっていうか。で、一個一個もすごい多い、全部が均一にあるわけじゃないし、一個一個がそんなに、初期は特に有名なね川の大きなあれが多いですけど、どんどんどんどん変わっていく。じゃあ全部それを覚えてるかっていうと覚えてない。美術館行って。だから逆に言えば何度も行ったりするんだけど。好きな絵がひとつあればいいと思うんだよね、美術館で。好きな絵とかへぇ~って思えることとか、結構まぁなんだかんだ2時間弱ぐらい、早くて1時間、2時間くらいかかっちゃうときもあると思うんですよね、大きい美術展だと。だから一個一個見てると大変だし疲れるし、教えてくれるオーディオ借りたりもするけど、その説明みたいな。とはいえ自分が知りたいことを全部教えてくれるわけでもないし。自分で見ながら、何なんだろうって思わないといけないんだよね。そのおもしろポイントってのはきっといろいろあるわけですよ。

僕の場合、写楽はなんかわかんないけど強烈だったんだよね。その強烈なものの正体が知りたくてずっと見てると、めちゃくちゃ変なバランスだわ、とか、すごいエネルギッシュだな、とか。その絵の力強さみたいなものがなんかすごいな、くらいに思うのよ。で、違う浮世絵見るとうまいけど、このうまさとは違う何かがあの写楽にはあったなとか。見たことで前のやつがわかってきたりするんだよ。そういう意味ではたくさん見たほうがいいってのもわかるっていうか、どうすごいのかが比較できるから、わかりやすくなってくるのはあるんだけど。

その次に当時の印刷っていうかさ。だから刷ってるわけだよね。その浮世絵ってのは一枚じゃないから、保存状態によってもいろんなものがあるんだけど。同じ作品がいっぱいあるわけだよね。で、そこに使われてるインクの豪華さとかにも気づくわけよ。顔料に。これめちゃくちゃキラキラしてんな、とか。それぐらいお金かけて売り出したんだな~とか。そういうこともわかってきたりすると、なんとなく注目された理由とかもわかってきたりするし。もちろん全部が真相かはわかんないよ。半分くらいはさ、想像だけど、みたいなことが見りゃわかるんだけど、でも、それをあとあとわかるのでもいいから、一個二個、もちろん多ければ多いほどいいけど、でも一個でも二個でも、あぁこれ面白いな、みたいな。そういうのがあるといいなと思うね。

僕は最初のほう割とダリとかがすごい好きだったから。ダリとかもよくわかんないんだけど、これはあれを表してるとか。それはダリ自身が結構おしゃべりだから言ってるんだよね。そういうものがわかるとなるほど、と思うし。でもやっぱりダリもそうだけどさ、最初見た瞬間にすごい強烈なものを受けたりするじゃない。ナニコレ⁉みたいな。どうしてこんなものが描けるんだろう、でいいんだよね。っていうのを一個でも二個でもわかってくるとね。

でも全部を面白がる必要なんてない。これは多分自分が考えてもわかんないなってものは飛ばしていくし、美術展でも。疲れちゃって、自分が好きなものを見つけるアンテナがしおれてくる前に、気になるものをバーって見つけたいって思う。あんまり美術展でそれやっちゃいけないときもあるんだけど、戻っちゃう。とりあえずバーって見て戻るみたいなときもあるし。バーって見て最初から何となく見直してくってときもあるしね。それは美術展によってはあまり混んでるときにそれやっちゃいけないっていうのもあると思うんだけど。だからいいんですよ。そんなに全部楽しもうとする必要はない。一個二個見つけるって気持ちでいいと思うんだよね。

 

★リクエスト曲「D.T.F.」

 

★音楽部 NABOWA「ラク feat. AAAMYYY」

NABOWAというインストバンドでございます。そのNABOWAがですね、AAAMYYYさんとフューチャリングした「キラクに」という曲をかけたいと思うんですけど。NABOWAは京都を拠点に活動しているインストバンドで、2004年からやられてるとのことです。インストバンドなんで僕もインスト聴く機会はあるんですけど、積極的に見つけに行ったり聴きにいったりはしないのでどうしてもボーカルあるものにいきがちなんですけど。だからNABOWAさんも今回のタイミングまで存じ上げなくてお恥ずかしいながら。でも聴いたらどれもすごいかっこいい曲で。本当にずっと聴いていられるな、美しい、みたいな気持ちで聴いてたんですけど。今回そこにAAAMYYYさんがボーカルで参加されてると。すごいいい楽曲なので。今回シングルではあるんですけど、ぜひ聴いてほしいなと思いますし、そのNABOWAさんの他の楽曲もどれも素敵なので、ぜひぜひ聴いてほしいなと思います。

 

今週は…まずはメール読みますか。すごい真面目なものが多いね。

★部員メール(読書しながら感想はメモしますか)

いやぁ難しいね。メモしながらはいかないな。ていうのもやっぱ読んでるリズム感を止められないんだよね。でも、一気に読めないときのほうが多いから、本って。途中でどうしてもここで区切ろうとか、ってことがあるとそこで一瞬考えるっていうか。あとは好きな描写にふせん貼ったり、折ったりしてくんだけど。折ることのほうが多いね。ドッグイヤーしてくことのほうが多いんだけど。とりあえず読みながら、ここちょっとチェックしておこうということで僕は折ってく。で、あとで読み返して。でもそういう読み方すんのはあれなんだよね、普通の本っていうか、普段の趣味用の読書ではしないかなぁ。気になった描写は折るな。(笑)どっちだよって。最近対談することが多くて。もう情報解禁なってるところで言うと、深緑野分さん。『この本を盗む者は』で話題になりましたし、僕と一緒に本屋大賞にノミネートされたということもあったりとかね。もっと言えば『ベルリンは晴れているか』ですごい話題になって、僕読みたかったんですよ。で時間なくてなかなか読めなかったんですけど、このタイミングで対談させてもらうことになり。やっと読めるっていう。こういう理由があるとね、一気に読めるんですよね。どうしても他の理由に優先して読んでしまう傾向があるんだけど。なのでこの話はまた後日しようかな。それは『ダ・ヴィンチ』で対談したんですけど。それが出てからのほうがいいかなと思うんですが。そうそう、だからすごいおもしろかったってことだけは先に言っておきますね。ぜひ、どちらも最高でした。

そういうふうに対談だとか、『タイプライターズ』で大沢さんが来てくれたりとか、それは放送になったよね。などなど、対談のケースがわりかし多くて。なので読む、そういうときは対談相手に伝えなきゃいけない。しかも直接著者に伝えるから、まとめなきゃいけないよね、なんとなく。うまく喋れないんだけど、僕はね。ていうのもさ、本の感想って難しいなって。難しいよね。ことばにすると途端に矮小化されるというか陳腐になっちゃうことも多いと思うんだよね。それがいつも嫌で。相手に対しても気の利いたことばを考えないといけないからそれがもうひとつの作品みたいな気持ちになってくるぐらい。なんだけど基本的にはメモしながらはあんまないなぁ。最後のほうにいくつかバーッて書いてたりするし。

一冊一冊の感想をなるべく鮮明に覚えていたいか~。それはでもすごいいい気もするけど、だから僕はできてないね。多分この印象で覚えてる。これってあぁいう話だったなとか、この本のあそこ好きだったなって部分は覚えてんだよね。ドッグイヤーとか付箋とか、折り目ついてると、あ、俺この本のこの部分気になったんだ、みたいな。意外と本の内容全部覚えてるってことは繰り返し読まない限りないよね。映画でもないもんね。でもあの部分のあそこ好きだったってところだけは結構覚えてるんだよね。あのシーン、印象的なシーン、印象的な…よく言うのは男の人はシーンで覚えて女性は台詞で覚えるって言うけどね。なんか本当かどうかはわかんないけど。そういうのは結構あるかなぁとは。『ダ・ヴィンチ』では僕のよく読み返す本を紹介させてもらったりもしたし、もちろん一部なんですけど。なんかそういう…でもいいよね。ことばにまとめたことで整理されるってことも多分にある。そういう原稿書くとき何度も読み返したりするから。そういうときに整理されてくってこともあるから。なるべく覚えてたいんだったらなるべくこの本の好きなところをまとめたらより覚えてられるよね。それはそうだ、まちがいなく。そうか、だから研究するときはそういうのもあるなぁ。この本がどうして面白かったのかを研究するつもりで、そういうのをやるというときもなきにしもあらずですね。

 

★部員メール(成人年齢の引き下げで大人になるのが怖い)

すごい、すごい悩んでるね。っていう思うのもよくわかるなぁ。18歳、僕は同じ経験をしてないからこの方と同じ気持ちにはなれないかもしれないけど、ハタチの誕生日で成人の意識が芽生えるかっていうと、多分それはなくて。もっと言えば、30になっても僕はないし、33になっても僕はないから。大人の世界に飛び込むというよりは、勝手に迫ってくるだけで、大人の世界って思ってることが迫ってるだけで、正直何も変わらないと思うんですよ。個人的にとりまく状況がね。何が怖いのかって思うけど、”社会を全然知らないわたしが”っていうところからいくと、社会なんてまじで一生わかんないと思うんだよ。だってさ、本当によく思うんですけど、社会とかそういうものってめちゃくちゃ絡まった、もう本当に毛玉みたいなものだと思ってるんだよね、糸が。いろんなところから糸がバーってあってほどけないね、そんなもんって。ほどくことが理解なんだとしたら、ほどけないんだよ。理解の解と書いてほどくって読むからさ。

無理なんだと思うけど、それでもじーっと見てると、あそことあの辺が繋がってるっていうか、この糸があの糸だってことはわかる、その一部が。そういうことが社会を知るってことだと思う。全部を本当に理解するってことは無理だと思うんだよね。それは人の数だけあって、今生きてる人の数じゃなくて、歴史とか思惑とか組織とか。組織もみんな人なんだけど。脈々と受け継がれた人の歴史の数だけあるわけだから、本当に無数の、天文学的数字の数だけ人の思惑があってできあがってるのが社会だから。無理だと思うんですよ(笑)、社会を知るということはそもそも。でも、それで諦めてしまうと結局損するのは自分なのでね。これ『ドラゴン桜』みたいな話になっちゃうけど。

だからそれでも社会を少し知るために、この一部のひもだけでも一本でも二本でも少しだけでもほどこうと思う、気持ちが社会を理解するってことに繋がっていくんだよ。多少ね。だからむしろそこに気づけるのが結構歳重ねてからだと、そこほどいていく時間がないんだけど、若いうちにそれを気づけたことがとても素晴らしいと思うし、あれですよ。こう考えればいいと思うんだよな。はやくおとなになっちゃったんじゃなくて、おとなを勉強する時間が増えたということを考えるとすごいいいんじゃないかなと思う。なんならちょっとうらやましいですよ。そうね。だから正直まだハタチって思ってたところで急に大人にさせられるじゃんって思いがわからなくもないんだけど。それをある意味ポジティブに変えていけたらいいんじゃないかなと。社会を知るってことだけに関して言えばね。いろんな側面はあると思うんですけどね。ということを最近よく思いますよね。それを知れば知るほど、ゆるせないものにはゆるせないし、人にやさしくなれることもできるし。僕の場合はそれが作家活動にも活きていくこともあるんですけどね。はい。なのであまり気負わずにね。楽しくおとなを過ごしてもらえたらいいなと思います。

 

★リクエスト曲「CHANGES」